退職しました

この度、令和2年9月30日をもって労働基準監督官の職を辞することとしましたので、報告いたします。

理由としては体調面の問題等いろいろあるのですが、何といってもやはり「公務員という仕事が、適性の面でも性格の面でも自分に向いていなかった」というのが大きいと思っています。詳細についてはまとめていつか書きます。少なくとも、人間関係や労働環境、生活環境が原因ではありません。職場の方々、ひいては地域の方々には本当に恵まれましたし、休みたいときには自由に休める環境でした。秋田は気候こそ過酷ですが、大体のものは街中に揃っており、ないものがあっても今時はインターネットで何でも取り寄せられますから、最低限の暮らしをしていくには特段の不便も感じず、食べるものや飲むものだって、どれを取っても手頃かつ大変美味で、下手に首都圏で暮らしていくよりもかえって快適なのではとも思いました。昨今のコロナ禍による息苦しさを考えれば尚更でしょう。

そういう訳ですから、しばらく秋田に住み続けるつもりでいます。次の仕事も、上手く行けば、秋田で見つけたいと思っています。恐らくIT系の企業になるでしょう。就職するまでの間は、情報系の勉強に加えて、せっかく中央大学の通信課程に在籍しているのもありますし、法律の勉強にも精を出したいと思います。また、飛行機が大変安くなっていますので、勉強の合間を見ては、まだその土を踏んだことのない国内のどこかに足を延ばしてみたいと画策しています。

ひとまず、取り急ぎご報告まで。

形容詞を巡る問い(4)――なされるべきことの整理(4) ※途中

形容詞の最上級はどのような意味なのか

最上級は、現代の意味論においてどのように分析されているのか。最上級に関する研究で必ずと言っていいほど引用されているのが、Heim “Notes on Superlatives”である。彼女によれば、最上級とはつまるところこういうことである。
$$(1) -est(x, R) := \exists d(R(x, d) \ \& \ \forall y(y \neq x  \rightarrow \neg R(y, d)))$$

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形容詞を巡る問い(3)――なされるべきことの整理(1)

問いを分割、整理する

前回前々回の記事で話をあれこれ広げてしまったが、結局自分が最終的に主張したいことは何なのか、と言われると、大変恥ずかしいことに、よく分からないのである。こんな体たらくでよく修士論文が書けたものだと自分でも呆れてしまうが、幾つか言い訳をさせていただきたい。ひとつに、このテーマに関して、先行研究が極めて乏しい、というかほぼ皆無同然で、論文等で定番の「○○の理論ではこういう点が説明できないが、私の理論ではそれが説明できる(し、さらにはこの問題も解決できる)」という定石の論法さえままらなかった、というのがある。それともうひとつ、このテーマに関わってくる問題があまりに広かったのというのがある。テーマの選び方が悪かったのもあるが、そもそも、問題を分割するということが今までろくに出来てなかったのだと思う。「困難は分割せよ」といった趣旨のことをデカルトが『方法序説』で書いているが、全く仰るとおりと言う外ない。という訳で、今までの記事で述べてきたことをもとに、論としての構成はひとまずさておいて、問われるべき問いを分割、整理して列挙することとした。 “形容詞を巡る問い(3)――なされるべきことの整理(1)” の続きを読む

憎しみのエネルギー、悪徳の礼讃

「自分を嫌う人間は自分に対するエネルギーが半端でない」、ポジティブ人間の代表とも言えるイチローの口から語られたこの信念が、ネガティブさにおいて他の追随を許さない思想家、エミール・シオランのそれと興味深い一致を示していることを、単なる偶然として片付けるのは早計であろう。 “憎しみのエネルギー、悪徳の礼讃” の続きを読む

形容詞を巡る問い(2)――部分的読みに関する伝統的説明の検討

2020/04/29 ドイツ語の誤訳を一部修正しました。

前回のおさらい

前回の話を要約すると、こうなる。

  • mésos「真ん中」という形容詞が冠詞を伴う名詞を修飾するとき、置かれる位置によって次のような意味の差異が生じる。
(1) mésē1mésosの女性単数主格形 pólis
the middle polis
「中心のポリス」
(2) mésē pólis
middle the polis
「ポリスの中心」

前回でも言った通り、(2)での読みを「部分的読み」と呼ぶこととするが、どうして一部の形容詞では、この位置に置かれるとそのような読みになるのだろうか、というのが、初めに提示された疑問なのであった。 “形容詞を巡る問い(2)――部分的読みに関する伝統的説明の検討” の続きを読む