グリーンスリーブスを熱く語ってみた(1)~そもそもグリーンスリーブスってどんな曲なんですか

Twitterで散々言ってるから知ってる人は知ってるだろうが、僕はグリーンスリーブスという曲が大好きである。どんくらい好きかというと、YouTubeで100曲近くグリーンスリーブスだけを集めたマイリストを作っているくらいである。我ながら執拗な人間だなあと思う。

どうしてこの曲を好きなのか、実はこれまで何度か説明を試みようとしていたのだが、中々上手く行かないまま今まで時が流れてしまった。とりあえず、グリーンスリーブスがどういう曲なのかというのを紹介して、かねてより達成を望んでいた説明の足掛かりとしたい。


グリーンスリーブスとは、おそらく16世紀辺りに成立した、イングランドの伝統的な民謡である。詳しいことはWikipediaにご説明願うこととして、ここではまず皆様のグリーンスリーブスとの関わりについて簡単にお話しして、グリーンスリーブスがどういうメロディーであり、何ゆえにそのメロディーが美しいのか、自分なりに解説してみたいと思う。

多分そこそこの数の方々がこの曲を耳にしたことがあるだろうが、そのような人の大多数が抱く印象は「電話の保留音」だと思われる。電話の相手に「少々お待ちくださいませ~」って言われてから通話の再開を待つまでの間に流れるあの寂しげな音楽である。もしかすると、人によっては中学校の音楽の時間にリコーダーで吹いたことがあって、なんとなく懐かしく思う方もいるかもしれない。いずれにせよ、そんなに身近でもなく、しかもどことなく地味な曲、といった程度の認識しかされていないのが現状だと思われる。

ここから、グリーンスリーブスのメロディーについて簡単に解説する。グリーンスリーブスの譜面をWikipediaから引用する。

民謡なだけあって、非常に素朴な旋律の作りをしている。まず音の動きを見てみると、ほとんど2度1ざっくり言うと、ド-レのような隣同士の音の関係。か3度2ざっくり言うと、ド-ミのような一個飛ばしの音の関係。の進行で成り立っており、結果的に非和声音3和音を構成する音以外の音。は最小限の経過音4例えばド-レ-ミにおけるレのような音。と刺繍音5例えばド-レ-ドにおけるレのような音。に限られている。また、リズムに注目しても、ほぼ「たーーーたー たーーたたー」(中々無理のある表現だな)というリズムのみで成り立っている。だから総合的に見て、グリーンスリーブスのメロディーは極めて単純であり、それだけに歌いやすく、記憶もしやすいため、民謡として多くの人に伝承され、現代まで歌い継がれてきたのかもしれない。

しかし、メロディーが単純なことと、それが魅力的であることは別である。メロディーが単純だということは、裏を返せば地味だともいえる。なぜグリーンスリーブスがこれまで多くの人々(そして僕)の心を惹き付けてきたのか、上記の説明だけでは不十分なように思われる。ここで今度は、グリーンスリーブスの和声進行(コード進行)に注目してみる6こっから音楽理論ゴリゴリになりますが一つ一つ説明するとキリがないのでどうかお許しください。

前半の和声進行を書き起こすと、I – VII – I – V | I – VII – I~V – Iとなる7~はこの記事限定の極めて非公式な記法で、同一小節内での和声進行を意味する。。ここで、一部のIを同機能の和音(代理コード)であるVIに置き換えると、I – VII- VI – V | I – VII – VI~V – Iという極めて簡潔な下降進行となる。

I – VII- VI – Vという進行は、短調で演奏してみると非常にキャッチ―な響きを持っている。個人的な感覚だが、かなりの数のポピュラー曲で、この進行が使われているのでは思われる(実際、この和声進行で演奏されるグリーンスリーブスも数多くある)。西洋の音楽理論に裏打ちされた現代の音楽にすっかり親しんだ我々の耳にとって、極めて心地の良い進行である。そしてグリーンスリーブスの和声進行は、その進行と非常に似通っている。

さらに言うと、I – VII- VI – Vという下降進行は、あの有名なパッヘルベルのカノンの和声進行と少なからぬ共通性を持っている。IとVIを、それぞれ3度上げたIIIとIという代理コードに置き換えると、III- VII – I – Vとなり、実はこれは(長調として捉えれば)そのままカノンの前半部分の進行になる。この進行はロマネスカ8正確にはその前半部分のみだがとも呼ばれ、16世紀のイタリアやスペインで流行した形式だと言われている。カノンの進行やロマネスカは、現代のポピュラー曲でも頻繁に用いられており、しばしば凡庸との批判もあるが、今も昔も多くの人々の心を掴んできた進行であると言っても良いであろう。

そして何を隠そうグリーンスリーブスの後半部分は、III- VII – I – V | III- VII – I ~V – Iという進行になっており、まさしくロマネスカ、カノンの和声進行(の前半)そのものとなっているのである。何という理論的美と音楽的美の合一!

こんな具合にグリーンスリーブスは、単純なようで非常に奥深く、民謡でありながら極めて高い完成度を備えた曲として仕上がっているのである。どうですか!?!?!?皆さんもグリーンスリーブスのことが好きになってきたでしょう!?!?!?

とまあ実際に好きになったかどうかはさておき、グリーンスリーブスの基本的な説明はこの位にして、次回からはグリーンスリーブスの様々なバリエーションについて語っていこうと思う。

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