「一橋大学アウティング事件 裁判経過の報告と共に考える集い」に行って思ったこと(3)
前回のはこちら
ひとまず言えること 主に絶望について
ここまでで言ってきたことを整理する。
- アウティングは、秘密を打ち明けた者が抱いていた信頼に対する裏切りであり、その限りで暴力である。
- 重大な秘密を打ち明けることは、確かに受容する者にとって重荷であるが、だからといってその秘密を不特定多数や共通のコミュニティに暴露することは、次の2点のために最善でなく、結果、不意のカミングアウトを理由としたアウティングの正当化はできない。
(1) 他の第三者機関などで打ち明け、悩みを聞いてもらうことができた
(2) 暴露によって秘密を暴露された側は甚大な(それこそ秘密を背負わされることよりずっと大きな)精神的苦痛を被る - とはいえ、センシティブな事項について何の前触れもなく知らされ、また受容しえない好意を知り、秘密を守り通すことを強制されることはある種の理不尽さを伴っているような感覚がある。結局、告白やカミングアウトさえしなければ、最初から誰も不幸になることはなかったのではないか、という疑義が生まれてしまう。
おくすり手帳
現状何飲んでんのか、ひとまず記録。ところでお医者は酒飲んでも大丈夫って言ってるけどホントかいね。まあ怒られても飲むけど。意志薄弱だから。
毎食
ドンペリドン 10 mg
ドグマチール 50 mg
レキソタン 2 mg
朝
コンサータ 27 mg
夜
ストラテラ 40 + 25 mg
レクサプロ 10 mg
サインバルタ 20 mg
PS2「ゼノサーガ」より Greensleeves(光田康典 編曲)
寒い
相変わらず修論を書きたくなさ過ぎて街に繰り出す。上野駅の広小路口より出て商店街に入り、暫くして右に曲がり、アメ横や道路を横切って、次いでオークラ劇場のある細い道を通って不忍池に出る。
幾らか前には青く茂っていた蓮が、今はすっかり立ち枯れになっていて、僅かな生き残りはしわしわの灰緑色の葉を池に垂れていた。ビル群の上には薄黒い雲が一面に渦巻いていて、隙間から覗く空の青も、落ちかかる夜の帳にくすむ。しかし、雲のいくらかはその襞に夕日の赤と橙を捉え、穏やかに輝いている。
僕はそれを良いものだと思ったので、思い立って、左右に交差する往来をすり抜け、池の柵越しに植わる木のそばに立って写真を撮った。
「見てたーちゃん、空きれい」子供を抱きかかえた女性がこう言うのを聞いた。
もう一人の通行人も、おもむろに鞄からスマホを取り出して同じ空の写真を撮った。
人々のゆらぎによって不忍池の一角に集った空の鑑賞者は直ちに散り、二度と再び交わることはなかった。僕は近くのベンチに座って道行く人らを見物したが、僕を含めた三人を最後に誰一人としてあの空に目をくれる人はいない。別のベンチでは、二人の老人がじっと座っており、彼らの傍らには猫が、やはりじっとうずくまっていた。
いよいよ夜が訪れて、風は益々寒くなり、空は紺に、雲は赤錆色にそれぞれ濁った。僕は帰ることにした。酒でも飲もうかと思った。